ラオカイ駅〜国境

朝目が覚めると、ベトナム最北部の山あいを走っていた。線路の際までびっちりとトウモロコシのようなものが植えられている。
到着20分前ごろ、車掌が各部屋の扉をあけて「ラオカイ、ラオカイ」と起こしにきた。そして定刻通り6時にラオカイ駅に到着。


向かい側のホームには緑色の機関車が停車していた。中国の東方紅21型を中古で輸入したもので、主に貨物列車に用いられているらしい。

西洋人たちがたくさん列車から下車し、避暑地・サパへ行くバスに乗車していく。ほとんどの乗客にとってラオカイは経由地でしかない。が、自分はまず中国国境へ向かうので、駅前にいたバイクタクシーのおじさんに国境の目の前にあるサパリーホテルまでの値段を聞いた。すると3万ドン(約180円)とのことだったので、その値段で乗せていってもらうことにした。

10分ほどで国境に到着。川が国境になっていて、対岸は中国である。平和な雰囲気で、川沿いを散歩している人たちがたくさんいた。しかし迷彩柄の軍服を着た警備兵が巡回していて、ここは国境なのだということを思い知らされた。
中国に入国
ベトナム出国審査

ベトナム側のイミグレーションはこの建物だが、工事中であった。

現在、実際に出国審査を行っているのはこの掘っ立て小屋である。この小屋で手続きが問題なくできるのだから、さっきの大きな建物は本当は必要ないのだろうが、おそらく中国側にベトナムの威信を示すためにあるのだと思われる。
ゲートの前には列ができていた。前情報ではリヤカーに荷物を満載した商人が多いとなっていたが、実際は軽装で並んでいる出稼ぎと思われる女性がほとんどだった。7時になるとゲートが開き、皆一斉に走って出国審査場へ向かった。自分もその中に混じって行ったが、外国人は別レーンらしく、隣のほとんど人が並んでいないレーンに並び直した。
出国審査では、まず本来ラオカイで再入国する際に使用するはずのeビザで入国していたことが問題視された。どこから入国したのか聞かれ、「ハノイエアポート」と答えると上司を呼んできて何やら話し合っていたが、どうやらその件は不問となったらしかった。次にいつラオカイに戻ってくるのか、その時のビザはどうするのかと聞かれ、「今日戻ってくる。今回eビザで入国しているので次はビザなしで入国できるはずだ。」とベトナム語に翻訳した画面を見せると、また話し合っていたが、なんとか出国スタンプを押してくれた。
審査場を出て、橋を渡る。

国境の川。向こうに見えている橋は、ベトナムと中国をつなぐ鉄道である。現在は貨物列車のみ走っている。

橋の中間地点に線が引かれていて、これが国境である。人生初の陸路国境ということでテンションが非常に高かった。

中国側のアーチ。五つの星と天安門があしらわれた中国の国章がついていて、いよいよ来たなという感じがした。
中国入国審査
アーチの右側に進むと、やはり仮設の審査場があり、まず入国カードをもらって記入。ペンが置かれておらず、自分で持っていたので助かった。その後、健康申告のQRコードを機械にかざすのだが、最初は案内通りパスポートも機械に読み取らせようとして全然読み取ってくれず焦った。どうしたものかと周囲を観察していると、誰もパスポートを読み取らせていないことに気づいた。そこで自分もQRコードだけをかざしてみたところ、ゲートが開いた。適当だな中国。
その後は入国審査。外国人と書かれたレーンに並んでいると、審査官が話しかけてきたので「I’m Japanese.」と答えてパスポートを見せると、入国の目的や、どこの町に何日滞在するのかを聞かれたので答えた。「purpose」が頭の中ですぐに「目的」と結びつかず少し考え込んだ。
すると、ついてくるように言われ、審査官が歩き出した。「これは別室で尋問される流れだな」と思って、人生でも有数の覚悟を決めてついて行ったのだが、案内されたのは別のレーンだった。鎌と槌のマーク☭と、「共産党員優先」的なことが書かれたレーンで、順番をすっ飛ばして先に審査をしてくれたのだった(笑)。
しかし滅多に来ない日本人ということで審査は大変厳しく、3人ほど応援を呼ばれパスポートのスタンプや、おそらくビザ申請時に入力した情報を隅々までチェックされた。面倒だからと、適当なダミーチケットで申請していればここで間違いなくアウトになる所だった。

無事スタンプを押され、建物の外に出ると、壁に「習近平法治思想」と書かれているのが目につく。そういう国に来たんだと感慨深かった。
河口の街へ

河口の街へ。柵を抜けるとたくさんのタクシーが待ち構えていたが、客引きはしてこなかった。

このようなスローガンが貼られていて、中国らしいなと思った。共産主義は宗教を否定しているのに、「信仰」という言葉を使うのは矛盾しないんだろうか。中国的には矛盾しないんだろう。

表通りは西欧風になっていておしゃれな感じだが…

一筋裏通りに入ると、普通の中国の田舎町だった。

旧河口駅駅舎。情報が少ないが、1903年にフランスの手によって建設されたものと思われる。駅舎の中はレストランになっていた。
食事ができる店を探したのだが、ベトナム側と違って朝から開いている店は少なかった。麺の店が空いているのを見つけ、入店。

「重慶小麺」という坦々麺のようなものを注文。真っ赤な色をしているが、そんなに辛くはなく美味しかった。辺境の地だが四川料理の文化圏であることがわかった。

川沿いを散歩。何の変哲もない遊歩道に見えるが、国境に面していて対岸はベトナムである。

その証拠として、川に降りられないよう有刺鉄線が設置されていた。
コメント
ありがとうございます。中国入国の際、ワクチン接種証明の提示などありましたか?
接種証明やPCR検査結果の提示はありませんでした。中国税関のアプリから健康申告をして、生成されたQRコードを機械にかざすだけです。